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第一章 二.
「……めろ、やめろよ」
思い出したくもない、記憶。悪夢となって、最悪の過去を見せる。
「親父、やめろって、なんで、お袋をっ」
撃たないで。
撃つな。
その拳銃は命を奪うために与えられたものではないはずだ。
しかし、そういう時に限って、“神様”は味方をしてくれない。
息子の声が届かなかった父親が、とった行動で。
八年経とうとしているというのに、まだ縛られたままだ。
「はっ……」
暗闇の部屋の中。視界にうつるのは天井。まだ夜だ。ぼう、としたあと、少し息をつく。
夜だ。あの日をこうしていまだに思い起こしてしまう。脳が、勝手に。その映像を見せてくる。
「……寝よう」
次に見る夢は、楽しいものであると信じて。
***
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