第十四章 三.

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「……何も」 「そうでしたか。私が紅乃ちゃんのお母さんに聞いたのは、ゼミ合宿に参加するから一週間ほど帰れないっていう連絡があった、っていうものでした」 「同じゼミじゃないのか?」 「違いますよ」  あはは、と笑いながら否定する亜子だったが、すぐにあれ、と首を傾げる。 「でもおかしいな。紅乃ちゃんと同じゼミの園田くんはさっき教室にいたし……、ゼミ合宿なら園田くんも行くはずなのに。先生は部屋にいるはずだから、確かめた方が早いかも」 「いつそれを聞いた?」 「昨日です。さすがに三日連続で大学に来ないのはマズイと思って。ほら、単位とか」 「今までこんなことは?」 「ないない。店長さんも知ってる通り、紅乃ちゃんは真面目だから」  だったらなおさら、今日学校に来ていないことがおかしいということになる。
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