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ということは、静己は死気には侵されていなかったのだろうか。と汐吉は考えたところで、やはり自分にはウラガミの能力があることに気付いた。
真菅は今しがた、“ウラガミでなければ死気による事件あるいは事故の場合、事実を見つけることができない”という意味のことをいった。
あのとき、静己は確かに瞳は紅くなっていた。黒い煙をまとっていた。それは、その時点で“汐吉がウラガミだったから”。
―俺が、ヒナゲシ会のことを知っていたら。能力のことを知っていたら。
父親は死ななかったのか?
「私は」
「っ……」
考え事にふけりそうになった汐吉は、真菅の声で現実へ引き戻された。取り繕って、彼の方を見る。
「松浪さんから、“王子神社のウラガミには浄化の能力がある”と聞いたときに、すぐ汐吉の顔が浮かんだよ」
そういわれた汐吉は、水をひとくち、口に含みゴクリと喉奥へ流し込んだ。
「……なんで」
「君は、面倒くさがりだし、いったん怒ると静まるまで時間がかかる」
「うるせえ」
「でも、素直で、和氣さんには優しい。そして、なんでも自分のせいにしたがる。静己さんのこともだ」
喰代静己。汐吉の父親の名前だ。
彼は、真菅の言葉を聞きたくないかのように俯いてしまった。
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