第十四章 四.

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 警戒心がないわけではない。だが、ボタンが盗聴器だなどと気付くだろうか。  自分にそれを渡したのは侑斗に違いないと信じていた。他に、沙雪自身に盗聴器をしかけるような人物に心当たりはないし、敵は作らずに来たつもりだった。可能性があるとすれば写真家になる前の職場だが、縁を切って以降、誰とも会っていない。 とすれば、おのずと限られてくるし何より、侑斗であれば全て説明がつく。 ―もし、二俣さんが……二俣さんじゃないとしたら。  死気は、案外もっと早くから、汐吉のそばで息をひそめていたのかもしれない。  沙雪は、人知れず身震いした。
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