第十五章 一.

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「もういい。沙雪、藤枝。ここまで来てもらって悪いけど、これ以上は探しても意味なさそうだ。帰ろう」 「そうねぇ。もう五時だし」  神社――厳密にいえば祈祷の受付などは四時や五時で受付を終わる神社が多い。富岡八幡宮は五時だ。つまりは、五時をすぎてここにいたとしても、参拝が終わればあとは帰るだけとなる。 「あ、ちょっと待った。話しておきたいことがあって」 「俺たちに?」 「そう。藤枝さんはさっき、ね。一緒に見たから」 「はい」  沙雪が盗聴器のことを話そうとしているのだと気付いた若葉は、安心させるように軽くうなずく。 「なんか、盗聴器、仕掛けられてたみたいで……」 「……沙雪に?」 「そう。ボタンの裏。ちょっと待って」  鞄に手を入れるとティッシュでくるんでいたそれを取り出す。
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