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「喰代さんから真菅さんに渡してくれない? 指紋とか、あるかも。ない可能性のほうが高いのは分かってるけど」
はい、と汐吉の手に握らせる。
「分かった、渡しておこう」
やや戸惑いながらも、受け取ったものをポケットにしまいこんだ。奥の方に。
「誰なのか大方見当ついてるのか?」
「ええ。いろんな人に会ってきたけど、私の服のポケットにボタンを入れられるのは二俣さんくらいよ」
「……二俣が?」
「そう。私が名刺交換する時って、だいたいオフィスなのよね。近づかないのよ」
「ああ……確かあの時は街中だったな」
「触られもしなかったし、気付かなかったのよ、ずっと。この上着、そろそろクリーニングに出そうかなと思ってたのよね」
もっと早くにクリーニングに出してれば気付けていたのかもしれないが。
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