第十五章 一.

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「喰代さんから真菅さんに渡してくれない? 指紋とか、あるかも。ない可能性のほうが高いのは分かってるけど」  はい、と汐吉の手に握らせる。 「分かった、渡しておこう」  やや戸惑いながらも、受け取ったものをポケットにしまいこんだ。奥の方に。 「誰なのか大方見当ついてるのか?」 「ええ。いろんな人に会ってきたけど、私の服のポケットにボタンを入れられるのは二俣さんくらいよ」 「……二俣が?」 「そう。私が名刺交換する時って、だいたいオフィスなのよね。近づかないのよ」 「ああ……確かあの時は街中だったな」 「触られもしなかったし、気付かなかったのよ、ずっと。この上着、そろそろクリーニングに出そうかなと思ってたのよね」  もっと早くにクリーニングに出してれば気付けていたのかもしれないが。
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