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第十五章 二.
――西側を行く汐吉と蒼早。大人と子どもで歩幅が違うため、歩くスピードも違うはずだが、あたりを見回しながら歩いているからか、自然と歩調があう。
「……いないな」
「あ、っと……ただの通行人だね」
黒い人影をひとつ見つけるたびに、そちらを二人そろってみるが、紅乃でも侑斗でもない。
「やっぱり空振りだな」
「今日はね。……盗聴器の件、どう思う?」
「二俣じゃないかもしれないってことか?」
「いや、彼だとは思う。ただ、どうして沙雪に盗聴器を仕掛けたのか分からなくて。だって、もし……喰代が狙いなら、君に盗聴器を仕掛けるんじゃないかな。常連だったならいくらでもチャンスはあったはずでしょ」
蒼早の疑問はもっともなものに思えた。汐吉は、うん、と一言だけ発してうつむく。
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