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第十五章 三.
「本当にここなのよね?」
「地図だとそうなってる」
着いたのはビルはビルでも、いわゆる廃墟のような――使われている形跡が見られないものだった。
「……劇場、だって」
「昔は劇場ホールかなんかだったのか。じゃあ中は広いのか?」
「そんなの分からないわよ」
汐吉に苦笑いしつつ答え、看板を横目に入口に立つ。
夜の六時、だんだんと薄暗くなってきた。まさに、闇の入口。
沙雪が意を決した表情で、そっとドアハンドルをつかむ。ひんやりとした冷たさを感じながら、引いてみたが動かない。今度は押すようにすると、ギィ、とゆっくり開いた。
「……鍵はあいてる」
「普通閉まってるはずだろ」
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