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汐吉がとっさに部屋の中央側へと一歩二歩、駆け足に近いスピードで出る。カウンターの向こう側にうずくまっていたのは――。
「……お前」
「……あれぇ?」
「わ、和氣さん!」
こてん、と首を傾げる紅乃を見た沙雪が駆け寄る。というのも、彼女はロープらしきもので縛られていた。
「和氣さん、探してたのよ。なんだってこんなところに」
「松浪さん……? あれ、店長もいる……水くださぁい」
「水、って……あら、石鹸の匂い。どこでお風呂に入ったの?」
「近くのぉ、ネカフェ……」
「ネカフェ?」
沙雪と紅乃は当たり前のように会話を続ける。汐吉は無言で紅乃に近づくとそばにしゃがみこんだ。
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