第五章 一.

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「すまない、紅乃」 「いえいえ。流しの片付けもやっておきますね」 「頼む。……ああ、真菅、いいぞ」 『ちゃんと聞けよ』  そうして、汐吉が真菅から聞いたのは、このようなものだった。 ――藤枝若葉  フジエダワカバ 二十一歳 男性  身長一七〇センチ 細身 いつも白いシャツを着用  現在○○大学○○学部三年生 アルバイト無し  独身 婚姻歴無し  毎週水曜日、金曜日に亀戸天神社で目撃されている 夕方や夜  車無し バイク無し 自転車の防犯登録無し 公共交通機関で移動している可能性有  いつもギターを背負っている 「ふじえだわかば、ね。……この人、本当に亀戸天神社のウラガミ様なのかぁ……?」  メモをし終えた汐吉がぼやく。電話の向こうで、真菅が苦笑いをしたのが空気で伝わってきた。 『本人に会って確かめればいいだろう。だから調べてほしかったんじゃないのか?』
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