85人が本棚に入れています
本棚に追加
「簡単にいうな。あの話の流れだと、俺も連れて行かれそうだし」
『ヒナゲシ会に入らないというのなら、それくらいはするべきだ。それに、鹿占くんが未成年だからといって、松浪さん一人に何もかも任せるのは負担が大きい。少しくらい手伝ってやれ。君も知っての通り、松浪さんは少々……、かなり抜けている』
一応、言葉を選んだようだった。言いたいことを理解した汐吉は、ふうん、と小さく鼻につくような声でつぶやく。
「ま、礼は言うよ。調べてくれてありがとう」
『ああ、役に立つならいいが。頑張れよ、汐吉』
「はいはい。じゃあな」
プツッ、と電話が切れる。ほとんど誰とも電話をしない汐吉は、ひどく疲れてしまった。一昨日もそうだが、今日ほど口を動かしたことはない。
「店長? 大丈夫ですか?」
「ん、ああ。平気」
流しのゴミをまとめて、処理を終えたらしい紅乃が心配げに声をかけてきたため、彼は適当に愛想笑いを浮かべて答える。
「思っていた以上に、よくわからないやつっぽいからな……」
「店長、手間がかかるの嫌いですもんね。なのにコーヒーとかにはこだわってるけど」
「それとこれは別だ。……ヒナゲシ会には、紅乃みたいなのがいないからな、今のところ」
「ついていきましょうか?」
「あ?」
「私、ついていきますよ。死気は見えないし、状況もよくわからないけど……、店長のお手伝いができるなら!」
その申し出は、汐吉を悩ませるのにじゅうぶんだった。
最初のコメントを投稿しよう!