85人が本棚に入れています
本棚に追加
第五章 三.
汐吉は沙雪の変化を気にしつつも、亀戸天神社に行くことになり、四人はそろって沙雪と蒼早の家を出た。そうして、最寄り駅である東京メトロの大手町駅に着こうかという時、声をかけてきた人がいた。
「あれ、店長さん?」
「あ? ……おお、二俣くん」
汐吉がその方を向くとカンテラの常連客である二俣侑斗がいた。いつもは北区で会う彼がこんなところでばったり、というのは、よほど偶然が重なったに違いない。
「和氣さんも、こんにちは」
「こんにちは!」
紅乃もニコニコと返事をする。侑斗は沙雪に視線を移し、一瞬値踏みするように目を細めた。が、すぐにいつもの表情に戻る。
「あなたは、確か前にカンテラにいた人ですよね」
「えっ? あ、私ですか、ええ、はい……」
自分にも声をかけてくると思っていなかった沙雪は、少しうろたえながらうなずく。
「そちらは?」
蒼早を見た彼が、首をかしげるようにして汐吉に尋ねる。
最初のコメントを投稿しよう!