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「ありがとうございます。ライターさんですか、もし写真が必要なときはご一緒できれば」
「こちらこそ、そのときはよろしくお願いします」
お世辞同士であはあるが、二人はニコリと笑んでまた頭を下げた。そして、腕時計を見た侑斗が汐吉のほうをみた。
「すみません、人と会う約束があるのでここらへんで」
「ああ、また店でな」
「はい、どうも」
汐吉らに見送られ、侑斗は微笑んで手をふってから、東京駅の方へ消えていった。
「……紅乃、二俣くんってこの辺に住んでるんだったっけ?」
「えー? どうでしょう、でもほぼ毎日店に来ていますよね。ここからカンテラに通うのは遠いような……」
紅乃は路線図を脳内に浮かべつつ、首をかしげる。三〇分ほどで行けるが、往復するとなれば一時間はかかるであろう。侑斗が電車でなければ多少は早いだろうが、彼が車を持っていないことは汐吉も紅乃も以前に聞いて知っていた。
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