第五章 三.

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「人と会うって言っていたから、やっぱり今日は特別なんじゃないですか?」 「それもそうか。あー、で、亀戸ってどう行くの?」 「え?」 「え?」 「え?」  汐吉の何気ない発言に、沙雪と紅乃、そして二人の反応を予想していなかった彼が同じ一言を発する。蒼早はどうでもよさそうに無言で視線を三人からそらした。  大人たちは、互いが互いの顔を見る。 「電車ですよね?」  と、紅乃が聞けば、 「電車は電車でもたくさんあるだろ。東京メトロとか、なんかいろいろ」 汐吉がそう答えるものだから、さすがに彼女も困ったように苦笑いを浮かべた。 「なんかいろいろ、って上京してきた人みたいな言い方……」 「確か半蔵門線ですよ。それから少し歩かないといけなかったはず」  沙雪が地図を見ようと紙を引っ張り出したが、よく考えれば、それは十社の位置を記したものであり路線図は載っていない。気付いた彼女は携帯を取り出した。
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