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桐生疾風くんは女の子が苦手みたい、東風香、一人を除いて。
花見が丘高校に入学すると更に桐生くん人気は高まった。
でもいつも桐生くんは微笑むだけで誰のラブコールにも応えることはなくて。
一見すると誰にでも優しいフェミニスト、天使のようなその微笑みに全校女子が魅了されてたかもしれない。
私を除いては、だ。
だってね、本性は。
「面倒臭いでしょ、そういうの、オレの顔しか見てない女の子なんかつまんないし」
ヘラリと笑うのだ、もう私にはその悪魔の笑顔を隠すことはない。
いつも一緒だから最初は中学校の時のように疑われたけれど。
まあ、時間が経てばわかるよね、ただ一緒にいるだけで男女間に現れるような独特の雰囲気などまるで漂わないから。
「ふうちゃんさ、最近オシャレしてない?」
帰り道、桐生くんが食べたがっていた高校近くのポテトコロッケを買いに付き合う。
美味しそうだなって思ってたら私にも奢ってくれた、後での倍返し請求が怖くなる。
「オシャレ?」
意味がわからずに首を傾げたら。
トントンと前髪をつつかれた。
「ヘアピン?」
こんなの皆やってるじゃん。
「それと眉毛整えたよね、リップも!!」
「まあ、高校生だしそれくらいは」
「全然ダメ似合ってない、誰か見せたい人でもいんの? ふうちゃんはさ、ずっとゲジゲジ眉毛でいいんだよ」
ゲジゲジ眉毛がショックすぎて頭の中でずっと抜けない、コロッケの味もわからない。
「桐生くんみたいにキレイな人にはわかんないよ」
小さく呟いたそれは聞こえてたようで。
「そうだね、わかんないわ。ふうちゃんとオレは赤の他人だもんね」
……呆れたようなその桐生くんの言葉はゲジゲジ眉毛よりもっと心の奥底に突き刺さった。
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