Story‐1 鈴重さん家の他愛ない日々

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呆れて笑ってしまう母など気にせず食を進める二人だったが、残念ながらその手と口は止められてしまった。 夕飯を食べているリビング、そのドアが開く音がして朝道と奏、そして母親までもがバッ!!と顔を向ける。 「ただいま」 「「「おかえり!!」」」 姿を見せた黒髪の男性。ネクタイ無しのスーツ姿の彼を見るなり三人は声を張り上げて帰宅を出迎え、まさかの声量に堪らず顔をしかめた。 「ご飯出来てるけど先に食べる!?それかお風呂入る!?それともあたし!?」 「子供の前で何言ってるんだお前」 物凄い勢いで詰め寄ってきた母の顔を押し退けながら言う彼は朝道と奏の父。鋭い目付きは奏とそっくりで、目付きは父の遺伝を受け継いだ物だと一目でわかるくらいに似ていた。 「早かったなお父さん」 「ああ。お前の誕生日に帰れなかったからな、仕事を済ませてすぐに帰ってきたんだ。ほら、ケーキ買ってきたからみんなで食え」 「二日連続ケーキやっふー!」 両手を広げて迫ろうとしてくる母を片手で押さえながら買ってきたケーキを朝道に渡す。テンションが上がる朝道だったが唐突に後ろから突き飛ばされた。犯人は奏だ。 「お父さんおかえりなさい。今日はもうずっといるの?」 「ついでに言えば明日も休みだ」 「マジでぇっっ!!?」 「お前うるさい。全員一回座れ、飯の時間だろうが」
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