Story‐1 鈴重さん家の他愛ない日々

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父に言われて素直に従う朝道と奏。母はまだ抱き付こうともがいていたが父の一睨みによって渋々言う通りに座った。 この父親こそが、今の世界の常識が作られたきっかけとなった人物。過去に起きた魔術師たちの戦争に参加し、そして勝利を掴んだ今では世界中に名が知られたとんでもない男。 鈴重夜道(よみち)。そしてその妻である鈴重響(ひびき)はそんな戦争で生き残った高校時代からの付き合いとのこと。二人の馴れ初めはそれはもううんざりするくらい響から聞かされているから朝道も奏も知っているわけで、響の溺愛ぶりはもう当たり前のような光景になっていた。 「四人で飯ってのも久しぶりだよな」 「そうだな、俺の仕事の都合でほとんど帰ってこれないから確かに久しぶりだ。だからいい加減じっとしろよ母さん」 「いやんもう素っ気ないわね~、いいじゃない久しぶりなんだからさ~」 「ちょこちょこ帰ってきてるって言ってなかった?」 雑談を交えながらの家族の団欒。強面ではあるが優しさもちゃんと見せてくれる夜道を朝道も奏も大好きで、さっきまで喧嘩していたなんて嘘みたいに和やかだった。 「お風呂は入るわよね?」 「ああ」 「お父さん、一緒に入ろ?」 「奏もういい歳だろ」 「久しぶりなんだしいいじゃない」 「きっしょく悪い猫撫で声だなぁ」 「あ"?」 「ひぇっ、なんでもないっす…」
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