Story‐1 鈴重さん家の他愛ない日々

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夜道に半ば強引に連れ出された朝道。すっかり日が沈み暗くなった外を二人は並んで歩いていくが、ふと朝道が気づいた。 「お父さん、コンビニならそっちじゃないよ?」 「まぁとりあえず付いてこい、見せたい物がある」 「見せたい物?」 夜道に先導されて付いていく朝道。どこに向かっているのか聞いてもはぐらかされてしまうだけでわからず、ただただ朝道は夜道の後ろを歩いていく。 「朝道は昨日で一七になったんだよな?」 「そうだね」 「俺が一七って言ったら人生で一番苦労した歳だ。俺の魔術がなんなのかは話したな?」 「召喚術だよね。五体の悪魔と契約するために頑張ってたってのはお母さんからも聞いてる」 「ああ。母さんとも仲良くなったのも、俺が人間辞めたのもその歳だ」 夜道の正体はもう子供たちにも明かしてある。だから朝道も今さら驚きはしなかった。 「あん時は母さんを守ろうと必死だった。今でも変わらないが、仕事をしてるとどうしてもずっと守るってのは厳しい。もちろんお前や奏を守るのもそうだ」 「まぁ仕方ないことだろ」 「確かに仕方ないけどやっぱり守らなきゃならない。でもいつでもとはいかない。だから朝道、お前が一七になったってことで頼みがある」 「頼み?」
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