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「どうも残党がいたらしいぜ。海外出張に行ってる辰己からのメールだと、その残党がまた薬物製造してるらしい。しかも護衛役としてロンドンの魔術師『灼熱飲み干す怪物(ヒートモンスター)』を雇ってる可能性があるんだとよ」
「最近非合法な取引があったらよく出てくる名前だな。いい加減この辺で潰しとくか」
「よおっしゃ!!ならここは俺が──」
「テメェは山積みの書類片付けるのが先だ」
「………デスクワークは向いてないんだよな~ホント…」
「他に動ける奴いないし俺が出る。どこにいるか情報無いか?」
「ちょい待ち~………辰己が言うにはまた大阪だとよ。しかも前の薬物製造してた場所からそう遠くない中学校の地下だとさ」
「また厄介な場所でやってるな……わかった、ちょっと見てくる。天倉も連れて行くが構わないな?」
「いんじゃね?現場研修ってことで説明つくし」
「そういうことだ天倉、実際に俺たちが何をしてるのかを見てもらうしやってもらう。まぁ今回は俺が全部やるから付いてくるだけだがな」
「…は、はい!行きます!」
新しい生活に戸惑いはあるだろう。でもそこまで苦には感じていなかった。
夜道や陽京、他の人たちは親切だし今まで見ることも知ることもなかった魔術協会の内情を見て知れる経験は刺激的だった。
それ以上に、自分がこうして普通に生活出来ている環境に感謝しかなかった。
用意してくれたのが前を歩いていく鈴重夜道。彼は信頼出来る、エゼルガのように裏の無い振舞いを近くで見ているから安心出来る。
そして何より───鈴重朝道の父だから。
「戦闘も覚悟だけはしとけ。魔力の節約は考えるな、必要なら悪魔化もしろ。魔力が足りなくなったらまた補充してやる」
「わかりました!」
「交通機関じゃ遅いな。こんなのでレイベット呼び出すのもあれだし……走るか」
「……………え。お、大阪まで…ですか?」
「心配はいらない、お前は俺が運ぶし車より速い」
(……やっぱり普通じゃないなぁ、あさみんのお父さんは…)
天倉美空は、とても充実した日々を送っていた。
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