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ゴバァアンッッ!!!と。
周囲に響き渡る鈍く重々しい音に、朝道も奏も、襲いかかろうと駆け出したチンピラたちも動きを止めてしまった。
「───二人一緒なんて珍しいな」
声は、確かに、絶対に、間違いなく。
「えっ……お父さん!?」
スーツ姿の二人の父、鈴重夜道の物だった。
傍らには長距離超高速移動で疲れ果てている天倉美空もいた。仕事を済ませて今ちょうど戻ってきたらしい。
「なんだこいつら。喧嘩してたのか?」
「ま、まぁ、ちょうど今からってところだったよ」
「お父さん、仕事は?」
「さっき終わって帰ってきたとこだ。しかし、そうか……喧嘩にしては数も、武器ありってのもどうかと思うが?」
チンピラたちを見回して言う夜道。突然の父親登場に狼狽えるチンピラたちだったが、リーダー格の男が鉄パイプを肩にかけて夜道に歩み寄っていく。
「なんだお前、あいつらの親か?」
「そうだが」
「すっこんでろよ、これはガキの喧嘩だ。親がでしゃばってくんじゃねえよ」
勇猛果敢にも夜道相手に凄むリーダーの少年。それには朝道も奏も、美空までも慌てふためく。どうやらこのチンピラたちは鈴重夜道を知らないらしい。まぁ、メディアには顔も名前も伏せさせているのが原因なんだが。
しかし夜道は表情一つ変えない落ち着きっぷり。そのままの調子で睨み付けてくる少年を真っ向から見下ろしながら、
「自分の子供が厄介事に直面してるのに見過ごす親はいないだろ。わかったら帰れ、そんでもう二人にちょっかい出すな。お前らでどうにかなる二人じゃない」
「だからよォ……でしゃばってくんじゃねえって、言ってんだろがッッ!!!」
なんとリーダー格の少年は、夜道の頭を鉄パイプで殴打してしまった。息を飲む三人が見つめる中、夜道はゆっくり頭を元の位置に戻す。
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