Story‐1 鈴重さん家の他愛ない日々

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夜道が顎で指示し、朝道はすぐにバイクに駆け寄った。ぐるりと何周もしながらバイクを見て、触って、朝道の顔がパァッと明るくなる。 「すっ、すげぇ……こ、これ、ホントにいいの?」 「お前がバイトしてんのは教習所に行くためなんだろ?母さんから聞いてるよ。実物があればやる気も出るだろ?」 「おは~…っ!俺こういうの乗ってみたかったんだよ!マジでいいの!?これ俺が乗っちゃっていいの!?」 「無免許で乗ったらブッ飛ばすぞ?」 「イエス絶対乗りません!!」 敬礼までして宣言した朝道に夜道は笑い、財布からキーを取り出してエンジンをかける。ブオンッ!!とアクセルを捻って排気音を響かせると、それだけで朝道のテンションがまた上がった。 「マフラー変わってるじゃんっ!!」 「よくわかるな。俺はバイクに詳しくなくてな、陽京……仕事仲間の奴に聞いて薦められたから付けてみたんだ」 「うわぁすげぇ……乗りてえ…」 「コンビニ行くし、これで軽く走って行くか?」 「マジッ!?ほほほー!乗る乗るぅ!」 夜道の運転で朝道は後ろに乗る形でいざコンビニへ。あえて遠回りしながらバイクを走らせ、後ろの朝道は加速するたびにうわうわ言っている。 「朝道」 「何!?」 「母さんたちのこと、よろしく頼むな」 「任せなさいよ!!俺がみんな守ってやるぜ!お父さんもお母さんも奏もな!!」 「俺も守ってくれるのか?そりゃありがたいな」 親子の誓い。それを朝道がどれだけ胸に刻んでいるのかは、少ししてわかることになる──。 ◆
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