Story‐1 鈴重さん家の他愛ない日々

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「お父さん!いっちょ俺を鍛えてくれ!!」 朝から元気な朝道は部屋から出てくるなりそう夜道に切り出してきた。一瞬呆気に取られた夜道だが、昨日の約束が朝道を突き動かしていることにすぐに気づいて、 「わかった、それじゃあ早速──」 「お父さんは私と買い物に行く約束でしょ」 「……そうだったな」 遮ったのは奏。めかしこんだ彼女は出かける準備万端なご様子。 「はあ?買い物なんて一人で行けんだろうが」 「何いきなり鍛えてくれとか言ってるの?何か変な物でも食べたんじゃないのグータラお兄ちゃん」 「グータラとはなんだぁ!俺はやらなきゃいけないことがわかったからそうするだけだ!」 「やらなきゃいけないことって?」 「みんなを守る」 「中二病キモ」 「ちっげーしッ!」 「ていうか『みんな』って何?もしかして私もその内に入ってるの?」 「え?そりゃあまぁ」 「お兄ちゃんに守られるほど私弱くないんだけど。守られたくないまであるんだけど」 「~~~~~!!」 朝道が奏を指差しながら涙目で夜道に訴えかける。朝道の気合いを根こそぎ奪いそうな辛辣な言葉に夜道はため息を吐き、コーヒーを一気に飲み干して、 「朝道にも朝道なりの覚悟があるんだ、そんな言い方するなよ奏」 「むしろ私の方がお兄ちゃんより強いんだけど。私がお兄ちゃん守ってあげようか?」 「やる気かヤマンバ!」 「お"ぉん?」 「ひっ…!?」
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