Story‐1 鈴重さん家の他愛ない日々

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兄の威厳を真っ向から踏み砕く妹という構図に父は呆然としまっていたが、ならばはっきりさせればいいと考えた夜道。 「よし、お前ら腕相撲してみろ」 「「腕相撲?」」 「殴り合いの喧嘩じゃ男の朝道が不利だ。だから腕相撲だ、純粋な腕力で勝負してみろ」 「え~……お兄ちゃんと形だけでも手を繋ぐのヤなんだけど」 「………」 「そ、そう言うな奏。なら俺とやってみようか」 「お父さんと?」 「ああ。二人順番にやればどっちが強いかわかるからな」 「お父さんと腕相撲なんてしたら肘が爆発するだろ」 「握られた手がトマトみたいに潰されちゃいそう」 「俺をなんだと思ってんだ?」 「「悪魔」」 「……正解」 ともあれ夜道はやる気らしく、仕方なく最初に朝道が夜道の正面に移動しテーブルの上で構える。 「やるならガチで行くぞお父さんッ…!」 「受けて立つ。奏、合図してくれ」 「はいはい。じゃあ行くよ。レディ~~……ゴーッ!」 「フィ~、洗濯物完了っと。あなた、今日はあたしとまったり過ごし…………………」 ベランダから戻ってきた響は視界に飛び込んできた光景に洗濯かごを落とした。 家族で食事をする大切なテーブル───それが真っ二つにへし折れていた。折れたテーブルだった木製のゴミを冷や汗ダラダラで囲む三人が立ち尽くしているのもおまけで。
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