Story‐1 鈴重さん家の他愛ない日々

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今のご時世もあってか夜道がいらぬ心配をしているのを見て奏が小さく笑う。奏に連れられる形で二人は店に入っては買うか買わないか話し、また別の店へとショッピングモール内を回り、その度に夜道の財布が軽くなって荷物が増えていく。 「お、おい奏、何もこんなに一度に買わなくていいんじゃないのか?」 「だってお父さんと買い物なんて滅多に行けないし、なんでも買ってやるって言ったじゃない」 「言ったけどだな……テーブル買う予算は確保させてくれよ?」 「あ、お父さんATMあるよ」 「追加資金の要求だと!?ま、待て奏、俺はこの前でかい買い物したからあまり余裕が無いんだ」 「何買ったの?」 「………し、仕事で使う物を。だから爆買いはやめてくれ頼むから」 「そっか、わかった。じゃあ最後にデザート食べよ?」 「昼飯前だぞ?」 「大丈夫大丈夫。それ食べたらテーブル買って帰ろうよ、お母さん待たせたらまた怒られそうだし」 「…そうだな、そうしよう。何食べたいんだ?」 「ソフトクリームがあるからそれで。私買ってくるからここで待ってて」 「財布持ってけ」 「いいよ大丈夫、私が出すから」 両手が買い物袋でいっぱいの夜道を気遣い奏はソフトクリーム屋へ駆けていく。夜道は一息つくために近くのベンチに腰を下ろした。
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