Story‐1 鈴重さん家の他愛ない日々

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「朝道のバイクが効いてきたな……まぁ、あいつらが楽しんでくれてるなら安い出費か」 仕事でなかなか帰れない夜道はずっと朝道と奏の心配をしていた。響に任せきりでろくに会いもしない父親だ、愛想を尽かされているのではと不安に思っていたが、無駄な心配だったらしい。 朝道も奏も素直でいい子だ。響の普段の教育の賜物か二人の元からの性格なのかはわからないが、ちゃんと父親として見てくれていることに安堵してしまう。 昔の自分じゃ考えられない心配事だ。他人などどうでもいいとまで思っていた夜道がこうも変わったのは、一重に響の影響が強い。そして朝道と奏という我が子が出来たからこうなったんだろう。 「お父さん、買ってきたよ」 「ああ、ありがとう」 手を差し出しソフトクリームを受け取ろうとする。 でも、夜道の手は途中で止まってしまった。 「どうかしたの?お父さん」 夜道の目線は左に流れている。その先を奏も見てみると、一人の男性がこちらに微笑みながら歩み寄ってきていた。 「鈴重夜道さん、ですよね?」 「ああ」 「初めまして、お会い出来て広栄です。私は──」 「それ以上近付けば容赦しないぞ」 「……おっと、随分と警戒されてしまっているようですね」 「敵意に気づかないとでも思ったか。一歩でもそこから動いたら知らないぞ、わかったらその微かに匂わせてる敵意を消せ」
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