Story‐1 鈴重さん家の他愛ない日々

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乱暴に頭をかいた夜道は買い物袋の紐に腕を通して持ち上げる。 「奏を追いかける!ラーミス、お前に協力してやるからその『黒魔術』を使う魔術師の情報を教えろ!」 「協力していただけるのならありがたいです。では早速教えましょう」 「移動しながらだ!今は奏を──」 「まず一人は私です」 ズッボゴンッッ!!!と夜道の腹に臓器が形を変えるほどの衝撃が叩き込まれ、買い物袋を全てその場にばらまいて夜道の体がショッピングモール内を猛スピードで横断した。 向かいの服屋に突っ込み、商品棚と商品、そして客の悲鳴が入り乱れ宙に舞う。試着室の姿鏡を突き破って壁を貫きモールの外にあった駐車場にまで投げ出された夜道。 「いい情報でした、あなただけでなくさらに二人も私たちの養分になってくれる者がいるなんて」 「ごパッ!?…がッ、…ラーミス…テメェッ…!?」 「嘘は必ず見破られていたでしょう、だから全て真実を話しました。そのおかげであなたからの話を全て我が同士たちに届けられました」 ちらつかせる携帯端末を見て、口から血を吐いた夜道は跳ね起きてすぐさまラーミスへ飛びかかる。 「私の目的はあなたの足留め、そして拘束です」 殴りかかってくる夜道。視認すら出来ない速度を出して迫る夜道をラーミスは見ない。どうせ見えないのなら、さっさと自分のやるべきことに集中して実行するだけ。 「【人知の及ばぬ暗黒の世界(アンノウンワールド)】」 知らない魔術が展開される。 そして。 鈴重夜道とラーミス・ハイムサックは闇に包み込まれ、やがて駐車場から───世界から消失した。
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