Story‐1 鈴重さん家の他愛ない日々

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不良軍団を物ともしないままに山積みにしてみせた少年少女は並んでガタガタ震えていた。 「夕飯の時間はとっくに過ぎてるぞクソガキども」 玄関で綺麗に直立している二人の前に立つのはエプロンを着けた金髪の女。二人の母親でもある彼女は鬼の形相と低い声で子供たちを恐怖に沈める。 「あ、あの……言い訳させてもらってよろしいでしょうか…お母様…?」 「言ってみろ」 「…えっと、その…なんか、柄の悪い連中に絡まれましてですね…それに対応していたので帰宅が遅れてしまったのですよ…」 「なんで秒殺しなかったんだ?そんなどこかのバカどもにてこずるような軟弱に育てた覚えは無いぞ」 喧嘩について一切お咎め無しというのも母親としてどうかと思う。だけどそんなことを言える雰囲気じゃない。言ったら秒殺どころか瞬殺されてしまいかねない。 「朝道の言い訳はそれだけか?なら次、奏はなんで遅れたんだ?」 「…このバカ兄が問題起こしてるのを見つけて、もうすぐ夕飯なのにグダグタやってたから手を貸してました。全部この兄のせいです」 「ちょっ!?俺のせいかよ!」 「だってそうじゃん。あんたがモタモタしてるから遅れたのは事実でそれが原因でしょ?」 「助太刀の礼をせびってきたくせによく言えましたなぁ!時間が無いのに『あっ私クレープ食べた~い』とか抜かしたのお前だろ!」
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