絶望誘う外道の余興

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魔力を掌に集め刀野の手を元通りにする───その格好の隙に、刀野の日本刀が斜め下から扇の胸を切り裂いた。 「ア"ッ…!!?」 傷口から燃え上がる炎。だが扇は痛みと熱に苛まれながらも刀野の手を再生させた。こんな苦しみなんて刀野に比べれば安い物。優先すべきは彼女の身だから。 「やっと出たな」 「ッ!?」 田上の剣先に集まった水の塊、そして朱美の拳を包む赤い光に前後から挟まれ、扇を中心に二つの魔力が爆散した。 「ッが…ハァッ…!!」 「キミなら治してくれると信じていたよ」 言葉の直後、日本刀が腹から入って背中から出る。貫かれ、内側から焼かれる扇が絶叫を上げた。 「魔王でありながら、私たちみたいな子供に真摯に向き合ってくれたキミならきっとそうしてくれる。だから迷わなかった」 「………だったらッ…わかるだろ…!?俺が、キミたちを傷付けたくないってことを…!!」 「実際のお前はどうなんだよ」 「ど…どういう意味だ、田上っち…!?」 刀が貫通したまま会話が続く。 「お前にとって俺たちは別にどうでもいいただの知り合い程度の関係なんだろ?」 「……は…?何を言って…」 「人間界に潜伏して人間を知りたかったんだろ。俺たちと知り合ったのは偶然で仲良くしてたのもただの気紛れ。お前にとっちゃ俺たちは観察動物くらいにしかなってないんだろ」
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