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「なるほど。それでご機嫌斜めなのか」
「それくらいで怒ったりしないよ」
仔馬は鼻孔を大きく開き、肺の空気を入れ替えるように呼吸した。
「僕の名前を、チャイロイアイツにするか、ウ〇コモレソウにするか、ワレセンベイにするかで揉めてるんだ。どれも御免だよ。知性がない!」
「じゃあ、お前は…何がいいんだ?」
仔馬は少し考えると答えた。
「…カムイクリゲ」
それは馬の種類ではないかと、突っ込みを入れたい父馬であった。
しかし、ここは天下の名馬ドドドドドドドドド。すぐに表情を引き締めた。
「わかった。お父さんがびしっと言ってくる」
「おお、さすがはお父さん!」
人間たちの前に立ったドドドドドドドドドであるが、彼が言葉を発しても、人間の耳では馬が鼻を鳴らしたり嘶いているようにしか聞こえない。
仔馬の名前について話していた3人の牧場関係者は、急に嘶きはじめた父馬をポカンとした様子で眺めていたが、やがてひとりが叫んだ。
「そうだ、シュバババババババにしよう!」
他の2人も「あ!」と声を上げ、満面の笑みを浮かべた。
「それいいね、速そうだし若者受けもよさそうだ」
「うん、ドドドドの子供だって一目でわかるし…これで行こう!」
間もなく、仔馬の「嫌だーーーーー!」という声が牧場中に響き渡ったという。
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