夜の牧場にて

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夜の牧場にて

「ジュニアよ、見えるか…」 「何がだい、父さん?」 「あれが、ダービーの星だ」 「…どの星を言ってるんだい、父さん?」  夜中にもかかわらず、カラスが元気よく鳴き声を上げた。 「今は夏だけど、あまり外に出てると、また熱出しちゃうよ?」  ここは北海道某所にあるグランパ牧場。  一時は経営危機に見舞われ、お倒産牧場と揶揄されていたが、一頭の名馬の活躍により、今ではすっかり黒字経営に持ち直している。  その名はドドドドドドドドド。  25戦12勝を挙げ、10億を超える賞金を獲得。生ける伝説と呼ばれるアサルトインパクトの血を受け継ぐ、グランパ牧場きっての名馬だ。  そんなドドドドドドドドドも今では引退し、こうして第二の人生を歩んでいる。  隣に立っているのは、その息子。名前はまだなく父馬からはジュニアと呼ばれている。ロマンチストな父馬とは対照的に、どこかリアリストな一面を持つ仔馬だ。
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