UBY2050

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離陸が近くなるとそわそわしだして周りの席を眺めるも、同乗するのはやはり皆が同級生ほどに思えるほどの高齢者ばかり。だがひとつ気付いたことは、面白いことに目に付く乗客は誰しもが年を召しているが女性しかいない、ということだった。乗務員には医者など居るのだろうか?とゆうは緊張をほぐすように考え、「まもなく離陸いたします」とのアナウンスに息を呑み、胸が高鳴った。 離陸の際の衝撃や体にかかる重量は想像していたようなものではなく、僅かに振動したなと分かる程度。表面張力による張り詰めた水が滴る程度の衝撃に拍子抜けするのと同時に、安堵の皮をかぶった期待と興奮がゆっくりとその皮を破り捨てて表象に今か今かと上昇していた。 実際、ゆうは感動して自然と涙をこぼしていた。 それは地球の重力圏から抜け出し、宇宙空間への漂流を始めて数十分後のこと。一席越しに窓の外を見ると、そこには地球が、天色と碧緑(へきりょく)色の化粧を施した母星が悠然と優しい顔を見せたからだった。 「きれいですね」 思わず隣席の女性に話しかけると、隣の女性は桜色の着物を身につけた小柄な女性で、真っ白な頭髪を微かに揺らしながら「ええ、とても」と上品な笑みと共に頷いた。 そのときだった。
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