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 既に、一流の売れっ子歌手として引く手数多だった。  驚く咲希にレオンは言った。 『僕の織姫。僕はいつか会えると信じて頑張ってきたよ。いつか必ず、一緒に音楽をしよう』 〝音楽〟。  私達は、音楽で繋がってきたんだ。  ひと月前に、ウィーンでのジョイントコンサートとレコーディングのオファーがレオンから直接来た。  やっと、レオンと同じ舞台に立てるところまで来たんだ、私。  一瞬の迷いも無く引き受けた咲希は、舞い上がる感情そのままに愛する夫に報告したが、反応はイマイチだった。 「なんで、玲君? もっと喜んでくれると思ったのに」  鍵盤に手を置いた時、そばに置いてあったスマートフォンが着信を知らせた。
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