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微かに笑う気配があった。
超ド級の育ちの良さ。物腰柔らかく、仕事を離れてしまえば、本当に優しい、誰もが認める人格者。
その手塚玲さんが、凍りつかせるような笑いを漏らしてる。
くるみは背筋を伸ばした。
「相変わらずですよ、咲希は。少しも悪びれる様子も無く、満面の笑みで僕に報告してくれました」
スマートフォンを持ち、見るものを震え上がらせる美しい笑みを浮かべる玲が容易に想像出来た。
「幼なじみが今世紀最高のテノールと謳われるまでになった、共演できる日が来るなんて夢のよう」
抑揚が柔らかい。これは恐らく咲希の言葉そのまま。真似をしている。
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