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レオンの部屋の窓から、テアティーナ教会が見えた。
『咲希先生!』
まだ幼さが残っていた玲君の声が耳朶に蘇る。
『今帰ったら、もう会えない気がするんだ』
白さが美しい教会の大聖堂は、ヤンチャだった少年玲君と別れた場所。
『大丈夫、会えるよ』
そう答えて指切りしたけど、あの日から20年も掛かった。
『約束の証に、咲希先生にこれを』
玲君、覚えてるかな。あなたは本当にオマセさんだったね。
Du maine Seele,Du maine Herz,ーー
甘い歌声が記憶に重なるーー、
「咲希、ストップ。ボーッとしてる」
レオンの煌びやかなテノールボイスはいつの間にか止んでいた。
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