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「何してんの?」
「いやぁ、こうすればカレンともっといられるかなって……」
カレンが湿り気たっぷりの目線でアユミを睨む。視界の端には顔くらいの小さな窓があり、その向こうでは澄んだ空と屋根だけ覗かせた家々が目で追いきれないほどの速度で過ぎ去っていく。周りが薄暗いので外の景色が余計に目に映える。
つまりは、新幹線の車内にいるのだ。アユミも、そして彼女に腕を引っ張られたカレンも。
「ちょっと、どうすんの……私乗車券なんて持ってないんだけど」
「それはそれとして、脚にキスしてもいいかい?」
「はあ!?」
「せっかく時間ができたんだからさ。無理矢理乗せたのは謝るから、お願い」
「……だめ。謝っても脚はお預け」
「そんな……」
この世の終わりを目の前で迎えたような顔のアユミ。これほど悲しい顔を見たのはカレンでさえ初めてかもしれなかった。
「でも、こっちならいいよ」
一歩近付き、両足の踵を上げる。アセロラの味がした。
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