本当の告白

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「また後で連絡するよ」 「そうだね。すぐ連絡する」  新幹線の車両の入り口を挟んで向かい合うカレンとアユミ。二人で何とか指定席まで荷物を運んだあと、まるで新婚夫婦のように時間ぎりぎりまで言葉を交わしているのだ。決して「寂しい」と口にはしないが。  ブザーとアナウンスが、もう出発するから名残惜しさを捨てろとホームの客に告げる。  二人は寂しそうに目を細め、眉を曲げた。 「ねえカレン。最後に一ついいかい?」 「何? また死にたいとか言われるのは嫌なんだけど」 「そうじゃないさ。ただ、カレンのことが好きだって伝えたかった」  遠くの自販機の取り出し口にペットボトル飲料が落ちた音が聞こえた。 「……はいはい、私の脚のことでしょ」 「うん。だからカレンが好き。愛おしいんだ」 「フェ、フェチだから好きって言われても……」 「いけないかい?」  カレンは答えに窮し、目線をあちこちに泳がせることしかできない。 「他の人が『顔が好み』とか『性格が優しい』みたいな理由で人を好きになるのと同じさ。もちろん他にもいいところをたくさん知っているけど、決め手になったのはその脚……私の性癖をゆがめたカレンの脚だよ。――うん、そうだ。カレンはその責任を取って私の愛の告白を受け入れるべきだ」 「ええ! や、やっぱり好きって、そっちの好きなんだ……」 「おかしいかな。カレン、やっぱり、ダメかな」 「いや、ダメってわけではなくて……」  プルルルル。電話のようなベルと共に発車のアナウンスが流れる。ベルと同じ速度でカレンの鼓動が空を叩く。 「カレン……もうさよならだよ?」 「ああぁもう! 好き! 私も好き! 今まで言葉にはしなかったけど、好き好き好き! 大好き!」 「――最後にそれが聞けてよかった。カレン、さよなら」  ドアを閉めた新幹線は見る見るうちに速度を増して、十五両の車両はすぐにホームを去っていった。  空のホームはわずかな風が少し早い秋の冷たさを運び入れ、新幹線から下りて一服していた者たちもパラパラと散っていった。五分も経てば、ホームは規則的にチャイムが繰り返し響くだけ。  そこには、誰もいない。
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