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「リエちゃんがまた嘘吐くかもしれないから、確実な方法をとらせてもらうけど、帰る気なくなったならいいよね?」
「あぁんっ! もっ、無理ぃっ!」
たった一度名前を偽っただけですっかり信用を失ってしまったようだ。
両腕を掴まれて、一方的に犯されているようであるのに、憎めない。本当は彼が魔法をかけてくれた時に心が囚われてしまったから怖いのかもしれない。
「無理じゃないだろ? 君は若いんだから」
この世界は時の流れさえおかしくなっているのではないか。
経験もなかったというのに、酷ではないか。恨み言も吐き出せずに嬌声だけが漏れる。
「いっちゃ、いっひゃあぁっ!」
絶え間なく襲いかかってくる快楽から逃れられないまま果てに追いやられる感覚にリエは震える。
それが恐怖なのか、期待や歓喜なのかは最早わからない。
「出すよ? くっ……!」
「はっ、ぁあ……」
まるで口付けるように強く押し当てられ、奥深くで吐き出される熱に嫌悪はない。だが、罪悪感は厄介な病だった。
愛されることが怖い。先が見えないからこそ幸せが怖い。失いたくないから、この夜の思い出を自分の中の奥深くに大事にしまい込んで去りたかったのかもしれない。覚えていられる保証もないというのに。
けれども、逃れられないならばもう抗うことはやめよう。深い闇に沈み込むように、そうリエが意識を手放そうとした瞬間だった。
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