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「お嬢さんに魔法をかけさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「は、はい……?」
その笑みがあまりに魅力的だったせいでリエはよくわからない内に返事をしていた。
そうして自然に手を取られて上げられると、リエの体は勝手にくるりと回る。ふわりと広がる淡い桜色、何が起きたのかわからない内に手の甲に口づけられてリエの頬も色づく。
「ごらん? 今宵の貴女はとても綺麗だ」
――そんなはずがないのに。
促されて振り返れば入ってきたはずの物とは違うドアがある。その大きな窓の外には夜の闇、そして、先ほどまでとは違うリエの姿が映っている。
改めて見れば上品な総レースのワンピースを身に纏い、髪も巻かれている。
その瞬間、リエはこれが夢なのだと悟った。ドアを開けた途端に寝てしまったのかもしれない。
「美しいお嬢さん、どうかもてなさせていただけませんか? お代はいただきませんから」
お世辞だとわかっていても、そう言われて悪い気はしないものだ。
エスコートされるがままリエは椅子に座った。
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