玄関開けたら……

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玄関開けたら……

 ――もう嫌だ。  毎日痛む鳩尾の辺りを抑えている。ふとした瞬間に口の中に酸っぱい物が広がる。呼吸が浅くなって、道端で吐きやしないか、突然泣き出して変な目で見られやしないか心配でまた吐きそうになるのを堪える。  毎日は戦いで、明日が不安で、家に帰っても気が休まらない。  緩くなったスカートに喜べば良いのかもわからない。  突然泣き出したくなったり、大声を出して暴れたくなったり、自分の情緒不安定さを実感して自己嫌悪に陥りながらも制御する術がない。  癒しを得ようと買った物に手を着ける余裕もないままに積み上がっていく。  今日一日をやり過ごしても、明日にまた敵が潜んでいる妄想に取り憑かれている。  ――いつになったら解放されるんだろう?  ――今すぐに全てを投げ出して、バカンスに行きたい。  溜め込んだ気持ちは何度目かもわからない溜息と共に出て行ってはくれず、体の中で重みを増していく。  そんな沈み込んだ気分と体を引きずって帰宅し、リエは自宅の扉を開けた――はずだった。
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