第九話 反逆者

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「さて、これでいくらでも、犯して、それで、王都に売れるな。ふっ……かわいそうに、アリスよ」  声を高くした騎士の声が聞こえる。 「『ホーリーアロー』」 「無駄だよ」 「やめて!」  やめろ…… 「やめるわけがないだろ。奴隷如きが、騎士に命令していいと思っているのか」  今までの騎士とはまるで違う口調。 「やめて‼」  一体、どうなっているんだ。  でも、アリスが苦しんでいる。  やめろ、騎士。いや、悪魔め。  やめろ。  力を、アリスを守る為の力を。  ステータスの穴よ、俺はお前を求めてる。 「ほう、豊かなピンクだ~」 「いや……」  ……変えてやる。  こんな世界は、俺が変えてやる。  ※※※ 『やあ、穴以来だね。さて早速本題だ。君はきっと今、危険状態にあるんだろう。じゃあ、穴に行ってみてくれ。きっと君を救ってくれる』  いきなり、そんな声が聞こえる。 「ああ、やっとか。俺は世界を変える。その力を、アリスを守る力を、やっと手に入れる」 「ステータス‼」  青い窓に表示されるのは『反逆者』の文字。  この力で俺はアリスを絶対に守る。  ※※※  上半身の服がやぶやれたアリスに覆いかぶさる、騎士は、アリスから離れて俺の方を見る。 「まだ立てるのか、内臓、傷つけたはずなんだけどな。30差じゃ、一撃で殺すには至らないか」 「俺は、アリスを救う為にお前を殺す!」 「面白くないな―。ざこが!」  ドンッ……  瞬間、俺はその場を走り去る。 「? 逃げたのか? はっやはり、奴隷はそんなものだな」  そんな声も後ろから聞こえるが、今は耳を傾けない。  見つけた。ステータスの穴。  俺はすぐさま、中にもぐり、 「ステータス、職業変更、守護騎士」  何をすべきか分かっているようにそう唱える。  いつもの様に俺のステータスは変更される。  身体能力30、魔法適性11。  俺は穴を出る。  しかし、ステータスに変更は無い。  そして、俺はただ走る。  アリスを救う為に。  ※※※ 「『ホーリーアロー』」 「うがっ!」  俺が騎士に向かって放った閃光はいともたやすく、騎士に突き刺さる。  それによって騎士は剣を離す。俺は空に剣があるうちに、奪い取り、一撃、二撃、三撃……と何度も打つ。 「くそがっ! なんでお前まで魔法を使えるんだ!」 「アリスを守る為に!」 「精神論を聞いてるんじゃねえんだよ!」  俺が振りかぶる剣を騎士は短刀で受け止める。 「たとえ、魔法が使えた所で、身体的な実力差は膨大。それに魔法ももう警戒している。貴様の負けだよ」  ドンッ、キンッ  剣と剣が何度も打ちあう。  騎士の短刀を回避して追撃、防御されるが、すぐに離れて攻撃。  そして、またもや、振り上げた剣は短刀に防御される。 「ぐはっ……‼」  筈だった。 「剣が二本あるとは思わなかっただろう」  俺が突き出した、穴の短刀は騎士の首元を貫いていた。 「なぜ、私は騎士なのだぞ。40越えのステータスなのだぞ。なぜ、私が負けるのだ」 「単純だ。お前が屑だからだよ!」  俺は短刀をより深く、突き刺した。  ※※※ 「アリス! 大丈夫か。何か変な事されてないか?」 「み、見られただけだから。大丈夫」 「そっか、良かった」  アリスは上半身こそはだけているが、戦闘時の外傷以外は特に傷は見受けられない。  俺は胸をなでおろす。  どうやら、守れたみたいだ。 「私たち助かったんだね」 「ああ、そうだな」 「ねえ、アルト君」 「ん?」 「私、アルト君の事、好きだよ」 「えっ……それって」  次の瞬間、俺の唇に暖かい感触が広がった。 「私じゃだめかな?」 「キスされて断れるとでも?」 「そっか、嬉しい」 「ああ、俺もだよ」  そして、俺らは深い抱擁を交わした。  ※※※  俺は今日、誓った。  アリスを守ると、ステータスに支配された世界を変えると。  もう絶対に、負けられない。  狂った世界よ、待っていろ。  俺が、反逆者だ。
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