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何だか変な雰囲気になってきたので、私は話題を変えようと質問した。
「あのー、大変失礼な事を聞きますが、これまでご結婚を考えることはなかったのですか?」
「何故、そんな質問を?」
「えっと、柊平さんってかっこいいですし、キジマ自動車の創業一族なんですよね? お父様はグループ会社の社長だし、ご自身もその会社の役員で。だったら、その……私みたいなただの会社員じゃなくて、元華族のお嬢様とか、そういう方から縁談がくるのではと……」
それを聞いた柊平さんが笑った。寒気がする程に綺麗だった。
「私の父のような事を言うんだね。案外、楓子ちゃんは封建的なのか……。なら、まわりくどい事せずに、権力を笠に着てあなたを力づくでモノにしてもよかったのかな」
「…………はい?」
柊平さんは優しく微笑んでいる。
でも、さっきまでと温度が違う気がする。
「あなたの事を調べて、取引先の社長の娘だと知って、私がどんなにうれしかったか」
あれ?目が据わってない? やっぱり酔ってる? 大丈夫?
私を見つめる柊平さんの黒い瞳は、黒曜石のように無機質にみえる。白い肌が薄らと紅く上気して、微笑む唇はいっそ淫猥だった。
「私の一存で、あなたの御父上の会社なんてどうにでもなるよ。だから私の言うことを聞いてくれる?」
さっきまでと、声のトーンさえ違う。
脅迫まがいの言い回しに、少し怯えつつ私は聞いた。
「何……? 何ですか?」
「あなたの足を舐めたいんだ」
嗚呼、私のお見合い相手が変態でした……。
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