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5. お見合い相手が豹変しました
「あし……なめ……?」
私が絶句していると、柊平さんは綺麗な顔で笑いながら、酷い台詞を口にした。
「……今夜はホテルに部屋をとってある」
こんな台詞、漫画かドラマの中でしか聞かないと思っていた。まさか自分が言われるとは。
私がこの人をぶん殴って「さよなら!」と言って帰宅しても、両親は怒らないだろう。一人娘である私を大切にしてくれてる父と母が、娘を売るような真似をするとは思えない。
でもきっと会社は潰される。
もし、木島グループの傘下におかれるなら、約300人の従業員が職を失うことにはならない。でも『榎伸工業』という社名はなくなり、父は代表取締役から外されて無職になるだろう。
私の祖父が創立した小さな会社。
「『榎本』が『伸びる』ようにと付けた名前だよ。単純だけど、ばあちゃんと二人で考えたから、じいちゃんは気に入ってるんだ」
幼い私にそう教えてくれた祖父が病気になり、父が引き継いだ後も、古参の社員さん達が懸命に支えてくれて、会社は僅かながらも発展している。幼い頃から社屋にも出入りして、社員さん達にも可愛がられていた私は、皆さんを家族のように思っていた。
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