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その家族を人質にした柊平さんを、私は睨み付けて言った。
「いやだと言ったら?」
「……あなたはさっき、私と結婚前提で付き合うことを承諾しなかったかな?」
「だってさっきまでは……! さっきまで私は……柊平さんのこと……」
柊平さんの事を好きだと思っていた。
今は何が違うんだろう。
私は何に怒ってるの?
騙されてた事?演技していた事?
でも、手を繋いで一緒に散歩をしていた時、私は幸せだった。
「私は楓子ちゃんが好きだよ。本当に。どんな手段を使ってでも、手に入れたいと思うほど」
美麗な、真剣な顔で、柊平さんが言う。その言葉に、私は心臓がとまりそうなくらいにときめいていた。
悔しい。
私は柊平さんが好きだ。もう、好きになってしまった。
「……わかりました。私が言うことを聞けばいいんですよね? 父の会社には絶対何もしないで!」
「楓子ちゃん、怒ってる?」
「当たり前です。こんな……」
悔しくて泣けてきた。物凄く腹が立ってたから、泣くもんかと思いながら柊平さんを睨み続けて言った。
「……こんな脅しみたいなことしなくったって、私は柊平さんが好きなのに」
私がそう言うと、柊平さんの顔から余裕の笑みが消えた。
そして、次に柊平さんが見せたのは、真っ赤になって照れている表情だった。
か、可愛い……。
何だか私まで照れてきた。
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