3008人が本棚に入れています
本棚に追加
2. お見合い相手は優しい人でした
木島柊平さんの第一印象は『清楚』だった。女性に使う言葉かもしれないが、それが一番似合っている気がした。三次元で、立体で動いてるイケメンというのは、恐ろしい程の引力を持っていて、私は彼から目が離せなかった。
ANAインターコンチネンタルホテル東京のロビーで待ち合わせてご挨拶をして、そのまま同階のアトリウムラウンジへ連れて行かれた。
木島さんは慣れているのかもしれないが、私はそのラウンジの、三階分くらいはありそうな吹抜けと、シャンデリア、謎のひらひら、硝子に流れる滝、そして見るからにセレブリティな客層にビビりまくっていた。
天井が高い空間の中、穴倉のように奥まった席があり、そこへ案内された。ソファーはふかふかで、間接照明が美しい。テーブルとテーブルの間がかなり広いので、会話が拾われる事も少ないのだろう。
せっかくだからアフタヌーンティーにしましょうと言ってくれたので、お言葉に甘えてオーダーした。それから私は、一番言いたかった事を切り出した。
「あの……新宿駅で会ったと聞きましたが、私は全然覚えていないんです。本当にすみません」
木島さんはそれを聞いてもにっこりと笑っていた。優しそうな人だな、とほっとした。
最初のコメントを投稿しよう!