3. お見合い相手とデートしました

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「このまま手を繋いでもいいですか? 転んで大切な足を怪我しては大変ですから」 「……はい」  私は多分、目がハートになってただろう。ちょっとぼーっとしていたと思う。  こんな事が自分の身に起きるとは。道行く人が振り返るほどの美形で、社会的地位もある紳士が、私の手を握ってくれている……。  根津神社を散策したあとは、有名なたい焼き屋さんに並んで、たい焼きを一緒に食べた。全然飾らない木島さんのその姿に、私はあっさりと恋に落ちていた。  お金持ちの御曹司(ボンボン)なんて、馬鹿坊(バカボン)しかいないと思っててごめんなさい。花を愛でる人に悪い人はいない。  根津から上野公園まで歩いて、不忍池のほとりで、私は木島さんに腕を引かれて立ち止まった。見上げると、すこし緊張しているような表情の木島さんが、私を見下ろしている。 「名前で呼んでもらえませんか?」 「え?」 「私の名前。柊平です」 「あ、えっと……はい。柊平さん」 「ありがとう、楓子ちゃん」  友人は私を呼び捨てにするし、「楓子ちゃん」なんて両親しか呼ばないから、何だか照れる。 「私はあなたが好きです。もしよろしければ結婚を前提にお付き合いしてもらえないでしょうか」 「……はい、よろこんで」  躊躇いながらも私が笑って答えたら、柊平さんが今まで見たことないくらいの無防備な笑顔で私を抱き締めてくれた。 「楓子ちゃん、ありがとう! 一生大事にするよ!」  私は生まれて初めてのシンデレラストーリーに舞い上がっていた。
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