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五 試飲会 甘い――
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「次は天の川に挟まれた、織姫と彦星をイメージしたものです」
クラッシュしたクランベリーゼリーを下に、二番目に無色透明のピーチブランデー、三番目に注ぐのはグレープフルーツのジュースだ。
赤、透明、黄色の三層のグラデーションが均等に見えるよう、グラスは円筒系のタンブラーを使う。
小さくちぎったピンクの綿あめを、グラスの縁に添えて完成だ。
「このカクテルは、どの客層を狙っているか、かなり分かりやすいねぇ」
オーナの言葉に私は頷いて見せる。恋人、というよりも女性向けのカクテルだ。
三層を一気に混ぜるもよし、一層づつ飲むのもよし、自分の加減で好みの味をスプーンで探っていくのもよし。
私個人のおすすめは、綿あめを一気にクランベリーの層まで突き崩し、かき混ぜて飲むやり方だ。
「カクテルと言うよりデザートの趣でしょうかね。私だったら、綿あめではなく開き直って生クリームをドーンと盛りますが」
意外とマネージャーは甘党らしい。オーナーが連れてきた男は、グレープフルーツジュースに溶けている綿あめをスプーンで突き、恐る恐る口をに含んでいる。
「グレープフルーツの酸っぱさが、綿あめで緩和されていますね。溶けていく感じも演出としていいと思います」
「……ありがとうございます」
「これに生クリームを……」
「善処します」
三者の反応を見て、私は話を進めた。
「それではラストの星降る夜に……」
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