エピローグ

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エピローグ

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「いやぁ。久々にみたら、君の腕の良さに惚れ惚れしちゃったよ」 「ありがとうございます、オーナー」  私服に着替えて店をでると、店の外でオーナーが待っていた。  そのまま一緒に帰路について、駅まで一言二言(ひとことふたこと)言葉を交わす。 「そういえば、彼の、私が連れてきたお客なんだが、どう思うかね?」  少し、罰がわるそうにオーナーが言う。 「……見た所、品がよさそうでした。オーナーと同じタイプの人間かと」 「あぁ、そうなんだが。彼が新しい店を出すというので、腕のいいバーテンダーを紹介して欲しいと言ってきたのだがね」  言いにくそうに顔を俯かせるオーナーに、私はある程度の事情を察した。  こんな風に心の機微に反応できるなんて、私も成長してしまったものだ。 「私はもう、大丈夫です。いつまでも、オーナーの厚意に甘えるわけにはいきません」  私の言葉に、オーナーは虚を突かれた表情になる。 「情けないよ全く。君を助けようとしたのに、結局僕は……」 「いえ、ずっと助けられていました。おかげで私は、雅之の思い出を形にすることが出来ました」  お客様に出すものだから。  第一に、お客様が望むものを考えるように。  そして、第二に、自分の心を大切に――。  この言葉に導かれて、私は青く輝く天の川を眺める日々から、日常に戻ることが出来た。  織姫と彦星の三層のカクテル――私たちの関係性。  私の好きな飲み方は、綿あめを下まで突き崩してかき混ぜる方法だ。  カクテルと(天の川にも彦星にも)溶け合うことのないゼリーは、花弁のように黄色く濁ったカクテルの濁流を舞い、口の中に吸い込まれていく。  停滞することなく、後退することもなく。  ただ淡々と日常(当たり前)を受け入れていく。  酒樽(ホワイトオーク)で眠るワインではなく、数多(あまた)の酒を扱う一人のバーテンダーとして。 「……あははは。やっぱり、あの青い氷のカクテルは、雅之と僕の故郷の星空だったのか」    オーナーが泣き笑い、私も自分が泣き笑う顔になるのを感じていく。  乙姫になれない私は、こうして彼がいない未来を生きていくのだろう。 「そうなんだよね。僕も、いつのまにか大丈夫になってさ、参ったよ。あの子には特別、目をかけていたのにね」  乾いた笑い声をあげてオーナーは空を仰いだ。  つられて私も空を仰ぐ。  都会の輝きに負けた、月も星も見えない夜空。  だけど、確信していた。  私たちは同じ夜空を見上げている。  雅之(大切な人)がいた星降る夜を。 【了】 07b832b7-0944-4915-aaaa-1276774196fc 今回の執筆にあたって、こちらのサイトを参考にさせていただきました。 初心者向け、抹茶リキュールの選び方&飲み方パターン集! https://www.youtube.com/watch?v=FJSS7_qCSyQ 観てるだけで楽しい、32のカクテルの作り方 https://www.youtube.com/watch?v=aJm-ow96F_c 色が変わる不思議なカクテル「バタフライピー」のお酒/How to make Butterfly Pea Soda Cocktail https://www.youtube.com/watch?v=27hHfbR-4m4
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