其の五 歴史の清め屋

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(国民に寄り添う、厳しくも優しい天皇だったんだろうな)  一通りの明治天皇の記事に目を通した沙夜はそんなことを思いながら、車窓を眺めるのだった。  東京に戻ってから数か月が経ったある日。沙夜がいつものように満員電車に揺られて出社すると、編集長からの呼び出しがあった。 「何でしょうか?」  最近の沙夜は単独での取材も多くなり、今回も何かの取材のために呼び出されたのだと思っていたのだが、 「実はな、関西支社が大阪に出来ることになったんだが、杉本、関西へ行く気はないか?」 「え?」  予想外の言葉に沙夜の頭がついていかない。 「もちろん、お前1人に行ってもらうわけじゃない。先輩社員も何人か行って貰うんだが、新しい会社だ。若い奴らで盛り上げていって欲しい」  編集長からの言葉が少しずつ沙夜に染み込んでいき、気付けば沙夜は笑顔で関西支社への異動を了承していた。  それから1か月は仕事と引っ越しの準備であわただしく過ぎていった。新しい会社まで電車通勤で1時間程はかかるが、沙夜は新居を京都府に決めていた。 「人神が動いた時に動きやすいし、何よりかがくんの地元だもんね、京都はさ!」  そんな理由で決めた新居への引っ越しも間もなく終わりを迎える。  沙夜はつき子さんとかがくんを交えた新生活を始めていくのだった。
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