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つき子さんはそんな沙夜の様子に微苦笑を浮かべつつも、閉ざされた門へと視線を投げた。一見すると見事な門扉だが、よく見ると梁のあちらこちらに大小さまざまな穴が開いている。
ひとしきり一人で騒いだ沙夜も気が済んだのか、つき子さんの視線の先を追った。
「つき子さん、この穴は何?虫食い?」
「銃痕です」
「銃痕って、えっ?鉄砲の、あの銃痕?」
つき子さんの言葉に驚いて顔を上げる沙夜につき子さんはゆっくりと頷く。
「いつ頃の銃痕なのか分かる?つき子さん」
「江戸幕末期の蛤御門の変、または禁門の変と呼ばれている頃のものです」
沙夜の質問にすらすらと答えてみせるつき子さん。そんなつき子さんと蛤御門の銃痕を交互に沙夜は見やった。日本史に疎い沙夜はつき子さんの言葉の頭、江戸幕末期と言うのが今からずっと昔の出来事であることくらいしか理解できなかったが、そんな昔の門扉が現代日本でも現役で活躍している所に古都京都の奥深さを感じるのだった。
蛤御門を見上げている2人は気付いていない。今出川御門の時と同様にこの蛤御門でも2人の周りに車通りはもちろん、人気が全くないと言う異様な状況に。
ひとしきり蛤御門を見学した2人は次の目的地としていた晴明神社を目指して出発するのだった。
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