其の一 つき子さんと初仕事

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 沙夜はスマホのナビに『晴明神社』と入力しナビゲーションを開始させた。ナビの地図によると、どうやらここから目的の晴明神社まで徒歩で20分弱、1キロ強の道のりのようだ。沙夜とつき子さんはゆっくりと歩き出し、来た道を戻っていく。  蛤御門を右手に歩き出した沙夜はつき子さんに尋ねた。 「さっき言っていた、何とかの変って何?つき子さん」  尋ねられたつき子さんは嫌な顔1つせずに、考えを巡らせながら説明をしてくれる。  蛤御門の変、教科書には禁門の変と書かれているだろうこの変は、江戸幕末期、京都を追放された長州藩が起こした市街戦だ。 「幕末で長州藩と言えば、私でも聞いたことあるくらい有名な藩だよね。その長州藩が京都を追放されていたなんて意外だな」 「そうですね。あの蛤御門では長州藩と会津・桑名藩が衝突し、その際に銃火器が持ち込まれていたために、あのような銃痕が残っています」 「へ~。凄いね、つき子さん!まるで見てきたかのような説明だよ!」  そう言う沙夜の笑顔につき子さんも笑顔を返す。そんな話をしながらナビ通りに進み、手近な交差点を京都御苑を背にして渡っている時に、2人の周りに喧騒が戻ってくる。交差点を渡り切ってから再び御苑を右手に進むと、良く見ていないと通り過ぎてしまいそうな細い道が見えてくる。  ナビはそこで左折するよう指示を出し、沙夜はその指示に従って細い一方通行の道へと入っていった。一見するとどこに繋がっている道なのか全く想像できないその様子は、子供の頃に近所の路地裏を探検したワクワク感を沙夜に彷彿(ほうふつ)とさせた。
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