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「結局、蛤御門の変ってどうなるのかな?」
沙夜の小声の呟きを聞き洩らすことなく、つき子さんは優しい声音で歴史を語ってくれる。
「最終的には、長州藩は敗走することになります。天皇への直談判は失敗し、その上御所に討ち入った形となった長州藩は、朝廷の敵である朝敵となるのです」
つき子さんの説明をふむふむと聞きながら歩いていた沙夜は、いくつかの交差点を越え、道幅が少し広くなった歩道をナビ通りに進んでいく。
「でも私の知っている歴史では、薩長同盟を組んだ後に薩摩藩と長州藩の人たちが中心となって江戸幕府を倒して、」
「はい、後の世の明治を築き上げます」
つき子さんに断言された沙夜はどこか腑に落ちない様子だった。
(朝敵となった藩の人たちが作り上げた歴史、かぁ……)
何故そのようなことが可能になったのか、きっと尋ねれば自分の傍にいるつき子さんは難なく答えてくれるだろう。
(でも、自分で調べてみるのも楽しいかも!)
そう思った沙夜はこれ以上のことをつき子さんに尋ねることなく、黙々と晴明神社に向けて歩みを進めていくのだった。
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